丸尾末広『少女椿』実写映画化決定!?

以前アンチ丸尾末広系サイトの管理人をやっていた手前、こちら方面の話しも一応ぶっておかなければならん、というわけのわからぬ強迫観念がいまだに残っているので、今日は丸尾漫画映画化についての独断と偏見の四方山話。

いらん前置きを付けてしまったが、某所で丸尾漫画・実写映画化の話題が出ていて、みんな好き勝手なことを言っていてなかなか面白い。なかには”ファンなどの勝手な妄想で語ったり楽しんでるみたいな空気が嫌”という硬派な人もいたりで、こういう雑多感というのも悪くはないものだと思い始め、私も丸尾漫画の映画化に思いをめぐらせてみた次第なのである。


どっちのゾンビショー〜本日の特選素材は薄幸少女(12歳)の人肉DEATH!ロメロゾンビVSフルチゾンビ、さぁ今夜のご注文はどっち?!

『ガロ 丸尾末広ジェネレーション』(2001.10)でのインタビューによれば、以前、丸尾漫画を実写で映画化したいという話があったそうだ。スパイク・リーの弟であるサンキ・リーは、『薔薇色ノ怪物』を永瀬正敏主演で撮らせてくれと言ってきたという。これに対して、インタビューの中で丸尾末広は、「そんなの絶対無理だって(笑)」と一笑に付しているが、漫画を原作として映画化するのが伝統になりつつある日本映画界、丸尾漫画が実写映画になったところで別段驚くにはあたらないだろう。いや、知名度からいって、むしろいままでならなかったのが不思議なぐらいではないのか。まあ、この丸尾漫画映画化の話はいつの間にか消えてしまったようだが、『薔薇色ノ怪物』をやりたいと言ったサンキ・リーの心意気は買いたい。『少女椿』や『笑う吸血鬼』のような安直な長編ならともかく、『薔薇色ノ怪物』を永瀬正敏でって、それが一体どんな映画になるのか、正直私には全くと言っていいほど想像がつかない。単にストーリーをなぞるだけではちと物足りない、原作の原形をほとんどとどめていなくてもかまわない、外国人によって再構築された丸尾世界に、私はひとかたならず興味があるのだ。

CMあけの、さぁ、どっち?!ロメロ、ロメロ、ロメロ、ロメロ、フルチ、となって、たとえ薄幸少女の人肉が食べられなくっても、私はルチオ・フルチの札を迷わずあげよう、それで悔いはない。ロメロのトム・サヴィーニが特殊メイクのゾンビも嫌いではない。が、そのゾンビらの軽さは否むことができず、私などはやっぱりフルチのゾンビを偏愛するものなのである。フルチのゾンビには我々を圧してやまないような重々しさ、暗さ、超現実感覚があり、ロメロのゾンビ三部作に倣い、フルチゾンビ三部作(?)と呼ぶうちの二つ、『ビヨンド』(1980)と『地獄の門』(1980)にいたっては、そこに現れるゾンビは超常的な能力を持っており神出鬼没、ゾンビらに喚起されるそのもやもやした不安感や焦燥感の混淆は、即物的とも言える亜米利加ものとは一味違う、なにやら不気味な怖ろしさなのである。そういう超現実主義的ゾンビが纏う雰囲気、オーラもそうだが、フルチゾンビの素晴らしさといえば、やはりジャンネット・デ・ロッシの特殊メイクによるところがとても大きい。その中でも特に私が気に入っているゾンビは、『サンゲリア』(1979)に出てくる蛆虫が湧いた腐ったゾンビ(サング)で、ブードゥー教なるキーワードにも全くもってそそられてしまう。ちなみにフルチの『サンゲリア』は、ロメロの『ゾンビ』がヒットしたので、最初からそれに便乗しようとした無許可のパクリ企画であったが、ゾンビの出来に関しては遙かにロメロのそれを上回り、さらに後にロメロ側から激しくクレームを受けた時なども、フルチはあくまでオリジナルを主張して取り合わなかったというその心意気やまっこともって天晴れというか、ハイエナ的というか…。

「ギチギチくんを『トイ・ストーリー』みたいなCGにしてほしい」とかいうヤングチャンピオン誌上での丸尾末広発言(1996)や、『笑う吸血鬼』日仏合作で劇場アニメ化(ガロ2001.10)の話はともかく、誰か丸尾漫画を”実写”で本当にやってくれはしないものか。モノにもよるけど漫画の実写化って別に嫌いじゃないからさ。もしも『少女椿』の実写映画が実現したならば、出てくる役者はきっとみんな棒読み、大根で、全体的にチープで薄っぺらい出来になりそうな気がして仕方ない。もちろんそれが悪いとは思わないし、むしろそういうしょっぼしょぼの世界観とのギャップも狙いつつ、鞭棄の特殊メイクだけは何故かめちゃくちゃ無駄に重厚に、フルチゾンビを手掛けたジャンネット・デ・ロッシに是非ともお願いしたいと思ったりもするのである。他の登場人物に反比例して、鞭棄だけマジ怖というね(謎)。なんなら「あ〜」とか「う〜」だけで一言も言葉しゃべんなくてもいいし、なんならワンダー正光に勝ってもいいや!あ、もうそれ『少女椿』じゃなくなってるか。ま、いっか。なんでもありありの方向で、誰か撮っちゃえばいいんじゃない〜?!なんてとりあえずは言ってみるものの、最近の映画に疎い私には正直ピンと来ないのがホントのところ。なにも想像さえできない。ならば私の思考がアナクロニズムな妄想に流れるのはもう自然の成り行きで。つまり私は日活ロマンポルノのひとつとして、丸尾末広全集的な『少女椿』が一番観たかったと妄執するのである。

”日活ロマンポルノ”といえば、1971年に始まり1988年に終焉をむかえる、いわゆるエッチなプログラムピクチャーだったわけだが、丸尾末広のデビューは1980年、個人的に丸尾末広のピークだったと思われる『少女椿』の発行が1984年、十分ロマポに間に合う計算ではあったのだ。
丸尾末広と同ラインと言うには戸惑いがあるが、まあよく同じ壇上で話されるという意味で、江戸川乱歩が原作の『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(田中登)や、夢野久作の原作ものでは『夢野久作の少女地獄』(小沼勝)に『瓶詰め地獄』(川崎善広)などがロマポになっているし、またマイナーなところでは寺山修司『わが故郷』が原案の『女子大生の告白 赤い誘惑者』(加藤彰)や、マルキ・ド・サド『ジュスティーヌ』が原作の『女地獄 森は濡れた』(神代辰巳)なんてのもあった。また漫画家でいうならば、例えば、ひさうちみちお平口広美石井隆佐藤まさあきダーティ松本大友克洋などが原作のロマポだってあるのだ。それならば丸尾末広原作のロマポがあったって全然おかしくはないのじゃないか。当時この企画を出さなかった関係者にわたくしはいまさらではありますが”おまんこ野郎!”とキヨシローのごとく怒鳴りつけてやりたい気になります。
まあそんなことはさておき、ロマポが始動した1971年、この年ロマポの第二弾として公開された加藤彰の『恋狂い』、この作品には映画館のシーンがあって、そこで上映されていたのは澤田幸弘の『反逆のメロディー』でありました。このシーンに関して、”あたかもニューアクションからロマンポルノへの展開を象徴するかのようなシーン”と受け取られてる向きもあり、(この映画以後もニューアクション的ロマポはあったりして)まあ個人的には深読みしすぎなんじゃと思わないでもなくはないのだけど、それはともかくとして、確かにまだロマポ草創期には日活ニューアクションにポルノ的要素を足したような映画が結構作られてたように思うのです。それ以後、ロマポは熱を帯びた若々しいほどの攻撃性から、ザッツ・ロマンポルノ!的な伝説的作品群で円熟期ピークをむかえ、徐々にマンネリ化し老衰していき、続々とデビューする女優たち、その消費サイクルの激しさはスター不在に拍車をかけ、アダルトビデオの普及台頭、またそれに対抗してにっかつが1985年に打ち出したキネコ方式の通称”ロマンX”への移行や、天地真理今陽子や高田美和などの旬を過ぎた過去の大物を脱がせて話題作りするなどの苦肉の策、また松島利行『日活ロマンポルノ全史』に詳しいがプロデューサー制の導入による人材流出などで、1985年以後ロマポは低迷(もちろん例外的作品もあるけれど)、ますます終焉間近を予感させるものになっていったのは容易に想像できる。そういう意味でも1984年の『少女椿』はギリギリであったのだ。
確かにロマポというのは女優が上位という図式があり、女優のドラマ性やら抒情性が全面に押し出されてくる傾向が強いわけであるが(例えば”女々しい”と言われる某有名ロマポ監督などはこの手のロマポ向きであろう)、それでも私は長谷部安春や澤田幸弘あたりなら、丸尾末広の(抒情性とは対極にある)硬質感とマッチするんじゃないかしらと思ったりするわけです。例えば、アニメ『地下幻燈劇画 少女椿』のオールラッシュを見たJ.A.シーザーが「あなたはみどりより、ワンダー正光の方にポイントをおいて作っているよね。もうすこしみどりちゃんのかわいらしさを出して欲しかったな。(原作の裏表紙を指さして)ほら、こんな感じのかわいらしさかな」と監督の絵津久秋に感想をもらしてることを想起してみるのはあまり関係がないことだろうか。ここでも個人的なことを言わせてもらえば、私は絵津支持のワンダー正光派でありまして、もっと飛躍して暴言を吐かせてもらえば、私にとって実写版『少女椿』は、つまりロマポ草創期に見られた”日活ニューアクション的ロマンポルノの復権”なのだ。ロマポにとって微妙な転換期1984、85年あたりに、当時希有の硬質性を持っていた丸尾末広で、老衰間際に一発ロマポの若返り化を図り、ロマポ全体の復活をも促す起爆剤として”それ”をやるべきだったと思うのだ(なんだか大袈裟な話になってきましたが)。
となると、題材は『少女椿』よりも以前の『薔薇色ノ怪物』ら初期作品群の方がいいような気もするのだが、しかし『少女椿』でも、たとえば大和屋竺とかならば、この人の作品の特徴の一つでもあろうが、きっとこれでもかと言わんばかりに、みどりちゃんをハードに虐め抜いてくれるだろうこと期待するわけです。ワンダー正光の鞭棄殺害シーン、曲がれ!ゆがめ!ねじれろ!の幻戯シーンなど、想像するだに楽しすぎるではないか。私は『少女椿』の真の主人公はワンダー正光だと主張したいものなのである。
ようは『少女椿』をベースに、石井輝男の『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』的な感じに、丸尾末広のいろんな作品、モチーフを綯い交ぜにし、しかも『少女椿』でアクション(ゾンビとか、爆発とか)をやるというね、たとえ興行的には失敗したとしても、後年に…いや、いいや、やめておこう、所詮妄想だ、ようは私は知ったこっちゃないってことで。なんだかめちゃくちゃ言ってますが、実際某所で交わされている書き込みはこんなものであるのだし(最後のみどりちゃんが泣くとこを大爆発させろ!とかさ)、まあ単なるテキトーな独り言なので別に問題はないでしょう。

最後に、日活ロマンポルノ『丸尾末広全集 少女椿(仮)』個人的にはこの配役で観たかった!
・ワンダー正光…山谷初男 ・みどりちゃん…蘭堂セル ・蛇女紅悦…渡辺とく子 ・カナブン…倉吉朝子 ・嵐鯉治郎…港雄一 ・赤座…団巌 ・鞭棄…石橋蓮司(特殊メイクはジャンネット・デ・ロッシ) ・海鼠…船越英二 ・芳一…たこ八郎
※一部ロマポに出たことのない俳優もまざってますが、そこはご了承のほどを。

画像上:ルチオ・フルチ『ビヨンド』ジャンネット・デ・ロッシの特殊メイクによるゾンビ。 画像下:丸尾末広少女椿』薄幸少女みどりちゃんを襲う(レイプする)ゾンビ、じゃなくて鞭棄。ハードな長谷部安春で観たいよな。