カマガネーゼ芹明香、あるいはmigimeの日帰り旅行日記

例えば、知人のF嬢は岸田森の、おそらく僕の知る限り、その熱狂ぶりでは一番のファンで、岸田森の出ている映画を全てフィルムで、劇場で観ることを使命としているようだ。そのためにはモーホーのハッテン場である浅草新劇場に一人で行くのさえ厭わないので凄い!僕は出来ることなら浅草新劇場には行きたくないのに…(*1)


まあ、その真似っ子というわけではないが、僕の場合は芹明香が一番好きな女優なので、彼女の出ている映画を全て劇場で観たいと思うわけだけど、まあ、なかなか観られないのばかりだったり。それでも今年の話では、シネマヴェーラ深作欣二特集で『資金源強奪』と『仁義の墓場』を観て、前者ではメガネっ子の明香に”萌え〜”となり、後者ではペー中の明香に”あの顔はガチだろ?!”となった。
それはともかく、『仁義の墓場』は昔ビデオで観ていて、芹明香のシークエンスはとても印象に残っていたのだが、改めて観て、その舞台が釜ヶ崎であったことを知ったのだった。
カマガネーゼ芹明香といえば、言わずもがな『マル秘色情めす市場』じゃないか!


以前、ラピュタ阿佐ヶ谷で『マル秘色情めす市場』を上映したとき、出演者である高橋明(以下、「メイさん」と記す)が飛び入りでトークをし、そのあとロビーで”ファンなんです”と話しかけたことが遠い遠い遠い遠い遠因となり、何故か後日メイさんと一緒に食事をする仕儀になったのであるが(それについてはまた後日)、その席での話題作りのため、というか純粋に未見のロマポが観たかったというのもあるけれど、旅行嫌いで関東から出たことない僕には本当にこれは珍事、大阪・神戸の日帰り旅行を敢行したのであった。目的は、まず福原国際東映で『横須賀男狩り 少女悦楽』のメイさんの怪演を観ること(*2)、もう一つは『マル秘色情めす市場』のロケ地を巡ることだった。


『横須賀男狩り 少女悦楽』の上映開始時間、大阪から神戸への移動時間、兵庫在住の友人Mちゃんと遊ぶ約束などの関係で、めす市場のロケ地探訪にはあまり時間が取れず、ほとんど駆け足になってしまったのだが、それでも通天閣→新世界→トビタ東映飛田新地釜ヶ崎と、氷雨の中、写真をパシャパシャ撮りながら、丸々2時間歩きに歩き回った。もちろん郷に入れば郷に従え、何故かフードはかぶるが傘はささない釜ヶ崎のおっさんスタイルでぶらぶらふらふら。確かに新今宮駅に着いた早々、そこのトイレで明らかにラリってる若い男にいきなり出会したときは(マジ)、”こりゃヤベーところに来てしまったか…”と一瞬ビビったが、慣れてしまえば自分で言うのもなんだが、結構町に馴染んでいたような。
帰宅後、ビデオで『マル秘色情めす市場』を観たら、数時間前に自分が歩いていたところが映っていて、嗚呼…となった。通天閣および周辺、づぼらや前、ジャンジャン横町、そのすぐ近くの芹明香チューリップハット田中登を客引きしていたガード下、冒頭で芹明香が座っている飛田新地の(変わり果てた)石段、特にこの時代に、西成の三角公園を横切る芹明香や、あいりん労働公共職業安定所の中をカメラ回して撮影できたなんて信じられない(隠し撮りだろうがヤバイでしょ。何かそんなことできる雰囲気ではなかった)。このたび映画を再見してみて、真夏のこの町を、ひとり気怠く、たゆたうように彷徨する芹明香がとてつもなく美しく、透明に見えた。芹明香はやっぱりめちゃくちゃ素晴らしい。


限られた時間で、どうしても表面的にならざるを得なかったが、でも地図も見ないで(プリントアウトしていった「地図」と「乗り換え案内」をどっかに落とした…)、出来る限りぶらぶらできたのはよかった(環状線沿線のダッチワイフが爆発する煙突跡や、路面電車が走ってる地区などはどの辺だったのだろう?)。トビタ東映なんて横道入ってしまって、ほとんど偶然見つけたようなものだ。ただ心残りは、泥棒市でおみやげを買おうと思っていたのだが、その市がたっていなかったことと、夜の飛田新地に行って妖怪通りを物色できなかったということだ。


このあと人に聞きまくって新開地まで行くのだが、電車の乗り方がよくわからなくて困った。梅田駅で降りたものの、梅田日活劇場も見学する余裕なかったし(つーか場所わかんねー)。福原町に着いて、劇場の場所がわからないので、そのへん歩いてたおっさんに聞いたら、”そこポルノだぜ”とニヤリとしながら教えてくれた。僕もニヤリとしながら”わかってます”と返した。
福原国際東映は成人映画の四本立てで1100円だった(安っ!)。でも僕は時間がないので『横須賀男狩り 少女悦楽』(がはは!メイさん、ヌレタコスやん!)だけ観て、三ノ宮に移動してMちゃんと遊んで、東京に帰ったのだった。


芹明香は最高だ!という日記のはずが、途中からどうでもいい僕の旅行の足取りになってしまった。だが、この氷雨の中の徘徊経験を活かし、後日会食の席で、メイさんと釜ヶ崎トークで盛り上がったことは言うまでもない。『横須賀男狩り 少女悦楽』での怪演については、本人全く覚えてないみたいだったけれども。



福原国際東映に貼ってあったポスター。て、手書き…


(*1)  浅草新劇場にて『狐のくれた赤ん坊』(1971大映・ダイニチ映配/三隅研次)など観た日、他にもたくさん席が空いているのに、わざわざ僕の隣に座るおやじがいて、不審に思う目つきで見てたのだけど、席を立つと、また劇場内をうろうろ、また別の人の隣に座り、しばらくするとまた立ち上がってうろうろ、あのおやじは一体なんなんだ?!スリか、それともハッテン場としての何かなのか。浅草の名画座に女性が一人で行くと妊娠するという都市伝説(?)がまことしやかに囁かれているが、もしも僕が女性だったならば、狐ならぬ”おやじのくれた赤ん坊”ってことになったかも知れない。


(*2) http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Stage/1493/meisan.htm



(追記)

カマガネーゼ芹明香のことをたまたま書いた本日(18日)、映画館で出会した知人に、奇しくも釜ヶ崎で暴動が起こっていることを聞いた。帰宅してパソコンを開くと…、嗚呼、こんな事態になっていたとは!
西成暴動2008のレポは、
http://www1.odn.ne.jp/~cex38710/thesedays13.htm
http://www.gyokokai.org/~gasparo/osakacity/kama_080613.htm
に物凄く詳しい。写真もいっぱい。やっぱり刺激的な町だ。マジすげー。

そして今日(14日)、再び西成署に多くの労働者が抗議に集まった。その抗議に対して、西成署は8時過ぎに機動隊を配備。空き瓶や自転車、石などが投げつけられ始めた。機動隊は消火剤を撒いて労働者を追い散らし、さらに放水車が労働者に向かって放水を始めた。
労働者は自転車を路上に並べてバリケードを作って対抗。さらに、機動隊に体当たり、消火器の投げ込み、もみあいや投石状態になって深夜に至っている。
ダンボールを満載したリヤカーで機動隊めがけて突撃とか、ワンカップを飲み干して空瓶を投げるとか、釜ヶ崎の「色」が強い攻撃も相変わらずだ。


上記のレポページから引用、嗚呼、特に最後の二行が最高だ。

日帰り旅行で飛田新地に入ったとき、そこに路駐していた車に書かれていた、見た瞬間思わず吹き出してしまった「西成のポリは頭が悪い」という落書きをふと思い出した。