2007年4月27日〜『罵詈雑言』 『腹腹時計』

渡辺文樹祭り最終日(あ、『御巣鷹山』は4/28もやってます)、今日は『罵詈雑言』と『腹腹時計』を観て来ましたよ。
渡辺文樹といえば、その過激な言動、パフォーマンスばかりが注目され(渡辺作品を正当に評価する人は少ないという印象が拭えない)、その唯一無二の個性、バイタリティから狂人のレッテルを貼られ、”映画界の暴走特急監督”と我々はこの渡辺文樹という男の人物像を知らず知らずのうちにインプリンティングされていると思うのだが、そのご多分に漏れず、僕が渡辺文樹ドキュメンタリー映画『俺の流刑地』(2007/村上賢司)へ行った理由は、そんな渡辺文樹を観たかったからであった。僕はこの映画に原一男が撮った奥崎謙三を密かに期待したわけであるが、その思いはこのドキュメント映画に限って言えば、見事に肩透かしを喰らった。あくまで狂人の渡辺文樹は観られなかったというだけの意味で。映画自体は悪くはなかった、このときの文樹は鈴木清順の弟である元NHKアナウンサー鈴木建二をも彷彿とさせる”気くばり”(サービス精神も含めて)の人で、世間で囁かれているほどメチャクチャではなく、そういう噂とは全く違った一面を捉えたところにこのドキュメントの意義はあったと思うし、素晴らしいことなのだけど、ただこのドキュメント、面白いか面白くないかと問われれば、まあ面白いことは面白いんだが、ただ例えば『ゆきゆきて、神軍』のような圧倒的な爆発的な面白さは正直言って、ない。そのような『俺の流刑地』に対する極私的不満を一気に解消、払拭してくれたのが今回の『罵詈雑言』であって、語弊を恐れずに言うならば、『俺の流刑地』は原一男奥崎謙三を撮っても失敗した映画であり、『罵詈雑言』は奥崎謙三奥崎謙三を撮って大成功した傑作なのであった、”ゆきゆきて、文樹”、え?わかりづらい例えだって?そんなことはもう知らん!とにかくそうと言ったらそうなんじゃい!毎度のごとく(書くのがめんどくさいので)『罵詈雑言』のストーリーや酷評等はネットに氾濫する情報の方にゆずるとして、極私的なことを言えば、今回渡辺文樹祭りで四作品を観たが、『罵詈雑言』が一番完成度が高いように見えた素晴らしい映画だと思った。この映画以降の文樹は『腹腹時計』『御巣鷹山』と、『罵詈雑言』と比べてあまりにもゆるいアクション志向(「自分大好き」志向)に走っており、もう今後『罵詈雑言』のような映画を撮ることもないだろうし、というか単純に撮れないとも思うが、それは個人的には望むところであって、好みの問題で言えば今回の上映で僕が一番好きだったのは『御巣鷹山』であり(”『切腹』のパクリやん!”とは言うまい)、今後もこの手のアクション志向で行って貰いたいと思っているものなのである。
腹腹時計』もネットの解説見れば、そのまんまなので割愛するけれど、しかし僕なりに補足すると…
”じじいアクションを撮らせたら文樹に勝る者なし!”
今回もじじいたちがヤバかった(笑)他にもいちいちツッコミ切れないほどその手のシーン多数!!にしても特に印象的だったのが、女テロリストに人質として捕らえられる子供の目が超虚ろ!泣き叫んだり全然しないの、ただ虚ろ(笑)
他にもいろいろあって、話し切れないのが残念ですが、僕は『腹腹時計』を観て、”渡辺文樹は和製スティーブン・セガールだ!”と思いましたね。いや、セガールの映画、一本も観たことないので超なんとなくですけど(テキトーやな)だって文樹、天皇が乗った電車に、爆弾積んだ電車で突っ込もうとするんだもん、ほら『暴走特急』ってな。
映画全体はゆるゆるだけど、爆弾の作り方を凄く詳細に説明しながら作るところとか、そういう捨てがたい魅力もあったりするんですけどね。にしても、『罵詈雑言』の前説では相変わらずの文樹節で熱くて、”おお!今日も許せてないなー!”なんて思ってたんですが、『腹腹時計』は自分でも出来は自覚してるんですかね、最後に観客から拍手が起こったときに浮かべた文樹の照れ笑いに、なんか”えー?!”ってなりました。
しっかし文樹ネタは全く尽きることないし、また鉄板でありますなぁ。