インポになりとうないんや〜!〜『壇の浦夜枕合戦記』

1/9の日記

食べたもの。カップラーメン×2(味噌味とカレー味)、アイスバー×3、ドーナツ×4、ポテチ、ココアシガレット。我ながらヒドイ食生活。高校生のときに”カップラーメン食べるとインポになるからやめなさい”と母君に言われて以来、いままでほとんど食べて来なかった人生なのだが、お湯を入れて3分という手軽さが物ぐさな僕にウケ、最近の主食がカップラーメンになりつつある、こんにちは、私がインポ予備軍の通り名ふにゃちんのmigimeです。



神代辰巳『壇の浦夜枕合戦記』1977を鑑賞。壇ノ浦の合戦で敗れた平家の女たちが源氏の男たちに囚われて屈していく珍しい王朝ロマポだが、構成は同監督『四畳半襖の裏張り』と同様で、建礼門院(渡辺とく子)と源義経風間杜夫)の密室劇を軸にして、建礼門院の心の声や、周りの者たちのエピソードが挿入される感じ。日記タイトルは別に先日シネマヴェーラで観た『夫婦秘戯くらべ』の中丸信の心の叫びではなく、『青春トルコ日記 処女すべり』での前野霜一郎の有名なスーパー。それはともかくブログ「映画をめぐる怠惰な日常」によると、『青春トルコ日記』1973は当初は全編歌で紡いでいく企画だったらしいが(結局は山川レイカの転落を歌で説明していくのは冒頭だけにとどまった)、『壇の浦夜枕合戦記』では登場人物の心情がときに猥歌で歌われる。例えば、この映画の主題歌「戦に咲く華」(作詞神代辰巳・作曲沖至・編曲中谷襄水・唄花柳幻舟からしてそうで、”♪心のどこかでもう一度 死にたかったの私は 哀れ波間に〜”云々というぐあいに源氏の囚われの身となった建礼門院のショットのときに流れ、彼女の胸の内が表現される。他にも、義経建礼門院に迫るときには”♪わたし十九やりたい盛りよ 胸をもまれたら我慢できぬよぉ〜”だとか、義経と通じてしまった朝、義経と微笑ましく見つめ合ってるショットでは、ニワトリの鳴き声がするなかで”♪三度続けてやられたことは 今日のあなたが初めてよ(コーラス)あーめでたい、めでたい”とか。建礼門院のときだけでなく義経本人つまり風間杜夫が歌う猥歌がバックに流れるシーンもあって、”♪自慢こういうなら聞いてくれ 三寸道具の雁太でおまけにいささか先曲がり おなごの魂ふきとばす〜”、源氏の武士たちが平家の女を物にしようとするときは”♪後家という字はよ、後ろの家と書くんだよ 前の空き屋は誰に貸すのかよ”、他、”♪尊いお方とするときは羽織袴でせにゃならぬ”といったぐあいに全編猥歌に溢れている。と、まあそれは神代ロマポの約束事みたいなものであるが。約束事といえば、風間杜夫が鴨居に手をかけながらぐっと潜る感じの歩行を繰り返すところに神代的な反復運動を感じる。
最近某所で「男尊女卑」というキーワードを聞くにつけ、ロマポを観ながらそれについてつらつら考えている。それについてはまた語る機会もあろうが、『壇の浦夜枕合戦記』での最もわかりやすい男尊女卑(弱者虐め)俳優は高橋明にとどめをさすのではないか。メイ氏が宮下順子を虐げるシーンは神代ロマポには珍しいような陰惨さが漂っていて特筆に価する。例えば、遊び女にしては白いと言って顔に炭を塗りたくる、水が欲しいのかと言って小便を飲ます、隣に寝転がってる女のザーメン付きおまんこを無理矢理舐めさせる、足やペニスを犬のようにしゃぶらせる、”鶏と交わるのが好きなのじゃ、首を絞めながらな!鶏は鳴くものぞ、鳴け!鳴け!”と後ろから犯すなど。蛇足だが、後ろからペニスを挿入されたときの宮下順子の尋常でない絶叫からもこれはアナルセックス(アナルバージン)であると推測される。例えば「鶏姦」といえば男色を指す言葉であり、肛門性交のことであるし。俗に首を絞めながらするとあそこも絞まると言うがアナルも同様のものだろうか。
またへりくだった男尊女卑というものも垣間見られ、源義経演じる風間杜夫などはその最たる例だろうが(モリオがへりくだりながら図々しいことばかり言うのがこの映画抜群の面白さではあるが)、子供の頃より尊いお方に恋焦がれているとのたまう源氏の下級武士(橋本真也)がしの井(牧れいか)に迫るシーンなどもそうだ。ただここでは体を許すと見せかけておいてキスするときに男の舌を噛みきる女気(おんなぎ)をフェイバリットな牧れいか(*1)が見せていて、それだけで素晴らしい。こう見ると案外フェミニスト(?)だったのは丹古母鬼馬二だけだったかも知れない。
あと特に素晴らしかったのは白拍子の田島はるか、振付は花柳幻舟。中島葵、山科ゆり(チョイ役…)といった主演級よりも牧や田島の方が魅せた。
結局、たとえ神の生まれ変わりだとしてもやるもんはやるでしょって不敬な映画だった気がする。「女の操は紙よりも薄い。これこそ地獄というものでしょうな」。



(*1)牧れいか、あるいは顔と名前が一致しない佐原京子
『新実録おんな鑑別所 恋獄』を観たが、女優陣のクレジット、序列順に梢ひとみ 山科ゆり 丘奈保美 南ゆき 佐原京子 南黎 宮崎あすか しば早苗 橘田良江 結城マミ 榊原あい 森京子 小川奈津子と、後ろの三人はわからなくても仕方ないかなと諦めもつくが、しば早苗が出演してるらしい他のロマポを何本か観たことあるくせにまったく顔と名前が一致しないのは如何なものか…。ピンク映画も観てないし全然わからない。
あと橘雪子が出ていて、でもクレジットには名前がない、どういうこっちゃとキネマ旬報社から出てる『日本映画人名事典』にあたってみたら、ちゃんと書いてあった、南黎が橘雪子なんだと、勉強不足で恥ずかしや。
しかし最大の謎は牧れいか、梢ひとみの敵役が僕にはどうしても牧れいかにしか見えないのだけど、消去法で行くとクレジットでは佐原京子ということになる。しかし、この佐原京子なる人物、ネットや前述のキネマ旬報社の事典、また『日本映画人 改名・別称事典』(国書刊行会)にあたってみても全くの謎なのである。
牧れいかは1974年にピンク映画でデビューし、1976年4月公開の『全開特出し姉妹』より日活のロマンポルノに移ったと一般にされているが、『恋獄』は1976年1月の公開で、ロマポ転向を機に改名したが(役名を芸名にデビューは早乙女愛方式だ)結局すぐ元の名前に戻してしまったということだろうか、ならば牧れいかの実質ロマポデビューは『恋獄』ということになる。
牧れいかは、牧れい、牧れいか、牧れい子と非常に紛らわしい”牧れい三段活用娘”の中の一人で、『悶絶!どんでん返し』のお尻でぴゅーぴゅーを吹く特訓を粟津ゴーとする女子高生売春婦とか、『女囚101 性感地獄』では策謀に長け、特に最後に見せ場たっぷりの美味しい女囚役とか、ロマポで主役は張れなかったけれど中堅よりちょっと下の実力派という感じで僕は好きな女優の一人なのだ。『恋獄』の梢ひとみの恋敵(?)は実力が要求される重要な役で(刺青もイカすじゃないか)、佐原京子が僕の見当違いで牧れいかとは全くの別人物だったならば、僕はこの佐原京子という新人(?)を讃えます。

余談。なんだか1976年の山科ゆりってキチガイ白痴女優のレッテルでも貼られていたかのような『新実録おんな鑑別所 恋獄』『暴行切り裂きジャック』『女囚101 性感地獄』の連発、どれもこれも彼女の狂演だけで十分観るに足る、ナユリスト必見。



『壇の浦夜枕合戦記』1977
監督神代辰巳,製作三浦朗,原作頼山陽,脚本神代辰巳/鴨田好史/伊藤秀裕,撮影姫田真佐久,照明直井勝正,音楽トランペット沖至/作曲・演奏・琵琶中谷襄水,美術柳生一夫,編集鈴木晄,録音古山恒夫,スチール浅石靖,助監督鴨田好史,振付花柳幻舟,主題歌「戦に咲く華」 作詞神代辰巳・作曲沖至・編曲中谷襄水・唄花柳幻舟
出演 渡辺とく子,風間杜夫,中島葵,花柳幻舟,山科ゆり,小松方正,宮下順子,高橋明,丹古母鬼馬二,村国守平,団厳,三谷昇,牧れいか,田島はるか,あきじゅん,森みどり,十時じゅん,中平哲仟,小見山玉樹,庄司三郎,橋本真也,石塚千樹,村尾幸三,工藤麻屋,梨沙ゆり,言問季里子,飯田紅子