ツレヅレ六十年代幻ノ官能女優達

宮益坂上の「寺子屋桃色活動写真」が先日開校し、ぼやっとしてたら今週末からは羅比遊多阿佐ヶ谷において「六十年代幻ノ官能女優達」が始まるんではないか!


おそらく秀作ばかりを集めたのだとすぐに了解できる宮益坂上の寺子屋みたいな上映一覧も桃色活動写真初心者の僕にはちょうどいいのだが(*1)、それでもその枠を軽く飛び越えてしまう、寺子屋よりもさらに偏執狂的な羅比遊多の上映一覧に、より心惹かれてしまうのをやはりどうすることもできない。


下世話な話、例えば寺子屋で「桃色創世記」とカテゴライズされた作品、すなわち『カベのナカのヒメゴト』(1965/W松孝二)、『コーヤのだっちわいふ』(1967/Y和屋竺)、『ぶる〜ふいるむのオンナ』(1969/M井寛)、『にゆうじやつく&べてい』(1969/O島勲)、『フンシュツキガン十五ダイのバイシユンフ』(1970/A立正生)、『ヌれボタン 5アクニンボーコーヘン』(1970/U沢薫)などは、フィルム上映の機会はともかくとして、全作ビデオ化されている有名タイトルばかりで観ようと思えばいつでも観られるものであるし、だいいち若松孝二と向井寛はともかくとして、他の若松プロ系の監督連中までも「桃色創世記」にカテゴライズするのはどうかという疑問もあるのだが、まあそれはまた別の話として、つまりはだ、「創世期」の冠に”まだ”価しそうな上映一覧は羅比遊多の方であって、それはごく個人的な感想を述べれば、例えば制作配給会社にはもうプリントがなく、監督が個人所有の目的のため焼いていた自作品の16mmフィルムをその監督から直接借り受けて掛ける本来ならば有り得ないような上映一覧であり(にしても湯浅浪男の『悲器』など一体どこから出てきたのか?!)、またトークゲストの超絶な豪華さ(*2)を考え合わせるとこの事件は言語に絶し、それは生温い学舎というよりも「虎ノ穴」といったガチ具合で、こちらも真剣に取り組まなければ殺られてしまうような気概さえ感じる。辛うじて『歪んだ関係』(1965/若松孝二)と『淫紋』(1967/向井寛)だけはビデオ化されているので観たことあるが、その他の七作品にいたってはそのタイトルさえも聴いたことがないものばかりだった。

(*2)3/14内田高子、3/29若松孝二、4/7小川欽也、4/11久保新二、4/18野上正義、5/2香取環


一般に、大蔵貢がおこした大蔵映画の傍系制作プロダクション協立映画で1962年に小林悟が監督した『肉体の市場』が桃色活動写真第一号だとされている。ちなみにこの映画に主演し、桃色活動写真史において「桃色活動写真女優第一号」の地位に燦然と輝いているのが、「六十年代幻ノ官能女優達」チラシの表紙でもあり(裏は内田高子)、五月二日のトークゲスト(!)でもある、香取環である。余談だが香取環といえば、日活時代は大部屋女優(赤木圭一郎と同期)で、「佐久間しのぶ」名義で端役出演していた。


1962〜63年の桃色活動写真創世期、それは小林悟(新東宝の傍系、近江プロから映画界入り)、関孝二(新興キネマ華北電影→テレビで動物映画200本監督等)、本木荘二郎(言わずもがな元東宝の大プロデューサー)、北里俊夫(池袋のストリップ小屋の経営者)、三輪彰(新東宝出身、湯浅浪男を代表とする「第七グループ」の第一回作品の監督として乞われる)、沢賢介(新東宝で撮る一方、PR映画の演出が主)、そして桃色活動写真監督”第七の男”として63年にデビューする若松孝二と、それぞれ出自の異なった監督(やスタッフ)が組んず解れつと入り乱れたカオス期だった。その後、桃色活動写真第一次ブームが起こるのが1965年であって、とりあえず今回羅比遊多で掛かるのはこれ以降の作品ばかりである。また監督のデビュー年を考えてみてもいいが、小川欽也と湯浅浪男は64年、向井寛と西原儀一は65年で、例えば「創世期」(まあ羅比遊多は別段それを謳ってるわけではないのでモーマンタイだが)というには小林悟はじめ上記六人の監督作が入ってないのは片手落ちであるし、むしろ羅比遊多の上映一覧は「第一次黄金期」の様相を呈していると言った方が近いかも知れない。

つづく



(*1)90年代以降の桃色活動写真といえば、いままで『桃お嬢さん』しか観たことなかったのだが、今回宮益坂上の寺子屋で数本観て、最近の映画も面白いんだということに気づいた。初見の(まあ全て80年代のものだが)1.『ねらわれた学園 制服を襲う』、2.『菊池エリ 巨乳』、3.『アブノーマル 陰虐』がとりあえず暫定極私的ベスト3。
1は言わずもがななナンノ・スケバン刑事のパロディ映画で、鉄仮面ならぬ三段締め養成ギブス、ヨーヨーならぬバイブが飛び出るけん玉エトセトラなにからなにまでカッコよかった(くだらなかった)。田口あゆみのスケバンがお供しますって赤い傘さして待ってるとことそのあとの歌(南野陽子?)とか凄すぎる。世界のタキタロウもいいけれど、渡邊元嗣の世界も最高だと思った。
2は繰り返される引きの(また長回し気味の)フィックス撮影が冒頭からしてひどく印象的で、パンは菊池エリの撮影現場にて初めて菊池の結合から池島ゆたかの顔になされるが、これが池島の恋情の萌芽を暗示させていて実に効果的だった。逮捕時の無声映画的演出、クレジットの際の自筆プレート、深夜のバーの浮遊感、相談師(?)の女のあっぱらぱー、それを素直に聴く菊池、彼女の素直さ(演技?)はとても素晴らしい。池島ゆたかテレビの中の菊池に顔面射精のプラトニック、とにかく良かった。
3は物凄いとしか言えないが、時代は佐藤寿保だなと思った(え?遅い?)。とりあえず佐藤寿保は『激愛!ロリータ密猟』ぐらいしか観たことないので、渋谷のツタヤに寄って『夢の中で犯して殺して』(決め手:パリ人肉事件の佐川君が出演してるから)と『狩人たちの触覚』(決め手:脚本が南木顕生だから)を借りた。つーか『夢の中で犯して殺して』ってビデオ題で、劇題は『浮気妻 恥辱責め』だったんですね!この映画、佐川君が出演してるというだけで前から観たかったのですよ。こんな形で邂逅するとは。ああ、『血を吸うカメラ』も借りなければ。
とりあえず90年代以降のでは『わいせつステージ 何度もつっこんで』『超いんらん やればやるほどいい気持ち』『痴漢電車 びんかん指先案内人』『白衣と人妻 したがる兄嫁』を観たが、わいせつステージが群を抜いて良い。