東映のジミーちゃん、大西秀明降臨!!

大西秀明といっても”やってる!やってる!”のジミーちゃんのことではなく、東映の映画監督。こんなの(http://www.jmdb.ne.jp/person/p0253860.htm)撮ってるらしいが一本も観たことがない。
『にっぽん脚本家クロニクル』の掛札昌裕のインタビュー、これを読むと掛札昌裕東映に入社し、京都に飛ばされ、初めて助監督としてついたのが大西秀明ってなってる。
掛札昌裕曰く、「僕がついたのは『将棋名人』(60年)っていう映画で、伏見扇太郎の主演のものです。これはモノクロ映画で、突然ストップモーションにしたりするんですが、役者に動きを止めさせるんですよ。とにかく不思議なことに熱中する人で(笑)」。(『荒野のダッチワイフ』(1967)を思い出させる!)他にも曰く、「大西さんは、凧に人を縛りつけて爆発させたり、とにかく怪奇シーンには異様な入れ込みがありましたねぇ」。

また『高田宏治 東映のアルチザン』の中で高田宏治は、
「興行的にもほとんど知られていない作品に『吸血死美人彫り』(昭和三十六年・監督大西秀明)というのがあるんですけど、その出だし。

1情景一
 暗黒の画面、その一点に突如放射されるスポットライト………髪ふり乱した女の生首が浮かび上がる。
2情景二
 泉水………見上げる水面に女の屍体、動く、と、首がない。その上に題名タイトル。
3情景三
 泥濘をかきわけて生首が行く。
 クレジットタイトル始まる。
 生首をひきずる荒縄………その先をにぎる猿のような手………黒い血の花のような生首をひきずって、せむしの婆がとぼとぼ行く。

この作品は女の彫り物に謎が隠されてるんです。いまでも現実に白粉彫りとかいろんな彫り物があるんですが、この場合は女が死んで初めて、謎を解く地図を隠した刺青が浮かびあがるんですよ。死体にならないと出てこない。そこから謎が解明されるというのがこの作品のアイデアなんですけどね。この映画はほかにも趣向、手練手管がいろいろ出てくるでしょう。銭で言葉の代わりにするとか、顔に蝋燭あてて、望遠鏡で読唇術で読むとかね。テーマなんかこの次で、ひたすらおもしろい着想ばっかり必死に考えて、試写室で内田吐夢さんが手を叩いて大喜びしてくれた記憶があります。」
などと言っていて、これから”大西秀明”は僕の眷恋の名前になっていた。

どっかで「大西秀明VS大西孝典特集」やらんかな…?!と思い、某劇場の某さんにやらないのなんて話したりしたこともあった。客が入るだろうかと捕らぬ狸の皮算用的な無駄な心配をしていたが、一日350人超(!)の集客を記録した『怪猫トルコ風呂*1(これを世間では”トルコバブル”と呼ぶ)を思い出して欲しい。カルトカルトとなんでもその一言で持て囃される今の時代、”ゲテモノ強し!”(「妄執、異形の人々」の客の入りに驚き、思わずつぶやいてしまった某劇場関係者の一言)なのである。某さんの耳元で”大西秀明、大西秀明、吸血死美人彫り、吸血死美人彫り、面白い、これはすごく面白い…”と呪詛のようにつぶやき洗脳したこともあった。ちなみに”VS”と書いたが、大西秀明と大西孝典は同一人物で、僕が密かに”奇跡の26歳!”と呼んで尊敬してやまないSさんが言うには、大西秀明は千恵蔵の内弟子から俳優になり、その後で助監督になった人で、人員整理で東映を去ってからは、大西孝典http://www.jmdb.ne.jp/person/p0253800.htm)の名前でピンク映画を量産、その後は喫茶店のオヤジになった異色の人なんだとか(大西孝典については今後「成人映画」誌を紐解く必要がありそうだ)。

しかし、ニュー東映の『吸血死美人彫り』とか『吸血怪人屋敷』とか超観たい!などと言っていたら、ある日事件が起こった。東映チャンネルの7月のラインナップに、な、な、な、なんと!大西秀明『吸血死美人彫り』が入っているではないか!テレビ初放送!しかも8月は『吸血怪人屋敷』も放送決定!
実は3月の末に我ら同士は組織票とバレぬよう東映チャンネルに大西秀明をリクエストしていたのだ。ただ単に巷間の大西秀明再評価の気運と重なっただけかも知れないが、番組編成のこととか考えてもタイミングがぴったりのような。リクエスト票って案外効くんでしょうかね?東映チャンネルも試金石のつもりで『吸血死美人彫り』を出して来たと思うので、これは放送後みんなで「死美人彫りサイコー!大西秀明監督の作品もっと観てみたい!山城新伍チョメチョメ!」と大西ブラボーなメールを(嘘でも)送ることが正しいです。そしたらまたまた放送あるかもよ。だからこれからもみんなで大西秀明を持ち上げよう、ね!やってる!やってる!

*1:DVD化を熱望してやまない谷ナオミが化け猫やった『怪猫トルコ風呂』、『にっぽん脚本家クロニクル』の掛札昌裕曰く、「あれはもう、第一稿でこのままやったら最高の恐怖映画になったろうなというのがあったんですけどね。目玉を抉り出された化け猫が出てくるんです。営業から気味が悪すぎるってクレーム来て書き直したから、全然違う物語になりましたけど」。桂千穂は「あれは谷ナオミ中川梨絵とかが出ててね、怪作だったな」なんて言ってるんですが、東てる美の勘違いではないでしょうかね