『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』

石井輝男といえば日本ゼロ地帯、鈴木則文といえば知能指数ゼロ地帯、中島貞夫といえばセックス猟奇地帯!ということで、シネマヴェーラ渋谷「妄執、異形の人々」で『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』を観た。
早めの回に行ったのにもかかわらず、かなり混んでて呆れました。みんな好きね〜。まあ見どころは、ほとんど新宿とマゾヒストのシークエンスしかなかった。


マゾヒストには家畜願望があり、またそれは馬派と豚派がある。馬派は女の尻に敷かれ鞭で打たれることへの願望であり、豚派はクンニリングス願望、それが極まったものが便器願望である、と、そんなバカなようなことを切々と滔々と語るマゾヒストに大ウケしたのだが、中島貞夫の『遊撃の美学』に詳しいが、このマゾヒストは沼正三なのだそう。沼正三といえば『家畜人ヤプー』、わたくしも今よりは本を読んでいた頃、また丸尾末広関係からのあれで当然読破しておりまして、この謎の碩学に心酔してました。それにしても女に踏みつけられ足蹴にされ、女のおしっこを直飲みしたり、便器の水で顔を洗ったりと、動く沼正三を観られる映画はおそらく『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』しかないでしょう。どーでもいいが沼正三は、勤め先のトイレや公衆便所の下に潜りこみ(昔のトイレは汲み取り式。『大奥浮世風呂』の志賀勝や「童貞厠之介」みたいなもんだ)、空から降ってくるおしっこを飲んでたそう。おしっこを飲めば、その人の健康状態までわかると。あと、うんこを食べても正露丸飲んどけば大丈夫なんだとか。


花園神社の赤テント、「状況劇場」の映像も燃えた。『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』の撮影年(および封切り年月日)を考えると、李礼仙の”腰巻お仙”は、ギリギリ1967年8月の花園神社「月笛お仙 義理人情いろはにほへと篇」の映像か?「月笛お仙」とは、”腰巻”とはなんたることだと花園神社総代が貸さないと言い出したので、お上品に改題されたもの。
しかし、映像のほとんどは1968年3月から6月にかけて花園神社の赤テントで上演した「由比正雪」に違いない。唐十郎麿赤兒大久保鷹不破万作は確認できた。若松プロでお馴染みの谷川俊之、四谷シモンも出演してるはずだが、どれがどれだか…。パヤ、パヤパヤと踊っていた二人は、一方が不破なので、もう一方はたぶん九頭登。若松プロでお馴染みといえば、割れたお面をつけて異様な妖気をまとってた男は吉沢健(!)のはずなのだが、顔なんか見えねえっての!花園神社の赤テントのシークエンスだけもう一度観たい。ちなみに赤テントは750万円で赤塚不二夫に買ってもらったそうです。


唐十郎といえば、映画のラストにまたまた登場、俺の女・腰巻お仙(言い換えれば自分)を探しに沖縄へモノローグ・ジャーニー。この唐十郎のイメージビデオみたいな映像に、僕がすぐに思い出したのは300円で買った東映ビデオ『仲村トオルinスペイン 青春・光と影』(1986年/監督:那須博之)で 、試みにパケ裏の煽りを書き出すと、
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トオル21才。心の旅は、終りを知らない−。
灼熱の太陽の下、トオルはスペインをさまよい歩く。
この国で謎の死を遂げた友の幻を追い求めて……。
青年期特有のゆれ動く心の風景を、ファンタジックな映像美と全篇トオルによるモノローグタッチの語りで綴った、ロマンチックな一篇。
光と影が交錯するスペインの地に立って、トオルは確かに何かを見つけた−。
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トオル」を「唐十郎」に、「スペイン」を「沖縄」に変えれば、『唐十郎inオキナワ 腰巻お仙・俺の女』のパケ裏のあおりに、そのまんま流用できる。
仲村トオルのビデオを手に取ったことのある者ならわかると思うが、パケ裏には赤字でこんな単語が、すなわち「TALL」。TALL→トール→トオルって?!それなら唐十郎は「COLOR」だね!(あーくだらない!)


あと、ヌードスタジオだったか、つげ義春のネタ(?)もあったなぁ。東京タワー、芝公園って、女が局部に向かって言ってた。つげ義春ならば、このあとに水道局、浜離宮東京ガスと続く。