竿師段平を引かせた男〜『若い貴族たち 13階段のマキ』

悦っちゃんといってあなたは誰を思い出しますか?
「原」と答えたあなたは将来不幸せなお嫁さんになります。
「市原」と答えたあなたは将来覗き盗撮で逮捕されます。
「奈美」と答えたあなたは将来ビーチクが両方もげます。
「志穂美」と答えたあなたは将来長渕キックでDVを受けます。
つーか、まんまのくっだらない「悦子運命占い」はともかく、先日8月10日は読売ランド前にあるシネマバー・グリソムギャングで知人が主催する上映会があったので行って来ました。


”人肉に群がるハイエナども13階段のマキがまとめて地獄に送ってやるよ!”ってことで志穂美悦子主演、内藤誠監督の『若い貴族たち 13階段のマキ』を鑑賞。2006年にギロッポンの映画館で元カノと観て以来(センチメンタリズム)、二回目です。極私的目当ては志穂美悦子というよりチョイ役の芹明香をもう一度観たかった。

芹明香は”櫛巻お京”という通り名で、少年院内で悦っちゃんを暗殺しようと忍び寄る。櫛巻きとは、髪の毛を櫛に巻き付けて丸めて後頭部でとめる結い方で、芹が頭の櫛を抜くと腰下まである黒くて長い髪の毛がバサリと落ちる、その髪の毛を寝てる悦っちゃんの首に巻き付け絞殺しようとするのだが、髪の量が多すぎて画面中毛だらけだった印象が拭えない。その姿はまるで貞子のようで(女の長い黒髪ってぞっとする…)、また悦っちゃんが自分の首に巻き付いた髪を無理矢理引き抜いたものだから、芹明香の頭皮はその部分だけ髪の毛ズルリと抜けて血だらけ、これまたさながらお岩のよう、怖い、怖いぜ、芹明香!その後も暗殺失敗を親ボスさんの柴田鋭子に責められ、植木鋏(!)で片耳をバチンと切られて地べたにもんどりうったり…。芹明香といえばこの前年の『マル秘色情めす市場』を筆頭に代表作多数、堂々と主演さえ張れる女優なのにこんな役…、やっぱカッチョ、イーネッ!(関本郁夫監督、芹明香主演『札幌・横浜・名古屋・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』を芹明香ゲストでグリソムでやらないかなぁ)

そして親ボス役の柴田鋭子も激シブ!よく東映の女王は池玲子杉本美樹かという命題がなされるが、内藤誠監督の『番格ロック』一発でもって東映女王の座は東映PVのニュータイプとでも言うべき柴田鋭子に譲られなければならず、『若い貴族たち 13階段のマキ』の彼女も植木鋏で薔薇の花をパチンパチン切り落とす登場シーンを始め(残念ながら悦っちゃんに負けそうになって逃げだそうとするまでは)カッチョ、イーネッ!なのである。
以前「偏愛的東映ピンキーバイオレンスBEST10」なるものをやったが、『番格ロック』を観た今、順位は大きく変動し、つーか池・杉本の代表作を軽々ぶっちぎったわけだが、番格をベスト10に書き加えねばと思いつつ幾星霜。それはともかくマイフェイバリットな二人、芹明香と柴田鋭子の絡みを観られるだけでもこの映画は至福なのだ。




終映後、この日のシークレットゲスト名和宏が登場。アブない話も飛び出し聴き応えありありの二時間弱、名和宏爆笑ワンマントークショー。いちいちオチをつけてくれるサービス精神と、なにより話しがお上手なのであっという間に終わってしまった感。


若い女はすぐフェラチオだ」
「腰を使う女が少なくなった」
「キスってのはヌルってしなきゃいけない」
「オレはサックみたいな器具を使ってまでセックスしなきゃならないんだったら、その女性とはもうヤリたくないね」
「いい女にブランデー飲ませてさ、そうっと素っ裸にして、ベッドの上に寝かせてね、それを見ながら、しばらく飲んでるなんてのがいいじゃない。女がヤリたがってるの知ってて、わざとヤラなかったり」


上記は別に今回のトークショーでの聞き書きではなく、『週刊大衆』誌上で内田良平と対談したときの名和宏発言(*1)。例えば、二人は穴兄弟の関係だとか、名和宏(当時42歳)は終始女とセックスの話ばかりでこれまたひどく面白く、また竿師段平に代表される東映ポルノの影響も少なからずあったか、名和宏といえば女に関しては本人曰くの”名取り”のイメージで、そういう脂ぎった話も期待していただけに、個人的には女の話はプライベートなことだからとあまりしてくれなかったのが寂しいといえば寂しかった(それでもオフレコの女話は少しあった)。まあ映画の話を嬉嬉とする姿を見てやっぱり根っからの映画俳優なんだなとは思ったけれど。


トークショーが終わった後、名和宏サイン大会になり、お客さんがずらりと列をなした。主催者の方が色紙を用意してくれていたので(気がきく!)僕も並ぶことにした。とある目論見があったのですぐに列には並ばず、最後でいいと思っていた。しかしこんなムサい野郎がサイン大会のトリでは名和さんに悪い気がして、傍らにいた女性に頼んでトリになってもらった。
さて、自分の番が来て、まあ本人を目の前にして緊張もしていたのでしどろもどろであったが、とりあえずこんな主旨のことを言った。
「以前、名和さんが女について語っているのを読んで物凄く感銘を受けたのですが、僕は全然モテないのです、どうやったら名和さんのようにモテる男になれるか、是非名和さん流の女にモテるためのというか、女そのものに対する心得、座右の銘などあれば、サインと共に色紙のこのあたりにお願いしたいんですけれど」と。
したら名和さん、「いい、いい、いい、いい」と手を振る拒絶のポーズをしながら腰を後ろに引くではないか。そこで僕は食い下がって「是非」と、そこで名和さんはまた「いい、いい、いい、いい」と、このやり取りを三回ほどして、僕もさすがに諦め、「じゃあ、一緒に写真撮ってください」と言ったら、「いい、いい、いい、いい」って、また名和さんが手を振りながら体を後ろに引くではないか!慌てて「あ、写真です、写真!」って言ったら、「ああw」と言って笑顔で一緒に撮ってくれましたけどね(笑)でも、この名和さんとのやり取りの一部始終を傍らでスタンバってた女性に見られてちょっと赤面。
嗚呼!こりゃ我ながらモテねえわけだ!と激しく思いましたとさ、あはは。



(*1)
『週刊大衆』に連載された対談シリーズの一つ、「内田良平の<悪役対談>」のこと。この連載は1975年4月24日号から9月11日号まで続いた。試みに確認できてるゲストを列記すると、今井健二高品格穂積隆信田口計天本英世成田三樹夫郷硏治佐藤慶、浜田晃、桜川ぴん助、深江章喜名和宏、安部徹、室田日出男、島村謙次、川谷拓三、安藤昇

蛇足だが、名和宏の回で穴兄弟の話をしてるときに内田良平が言った名言を最後に。
「マジメな人からみれば、お互いに女性をやり取りするなんて、不潔でいやらしいなんていうかもしれないけど、その女性のよさがだんだんわかってくると、そんなこと平気になってくるね」